- 空き家対策は「人」がカギ! 人材育成や学生参加で新たな風を 投稿日 2019年10月8日 07:00:55 (不動産ニュース)
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2019年8月1日に国土交通省から発表された「令和元年度 空き家対策の担い手強化・連携モデル事業」。空き家対策のモデル的な取り組みについて国が支援を行い、その成果の全国への展開を図る目的で平成30年度からスタート。令和元年度は111件の取り組みの中から、60件の事業者が選ばれた。今回は、選ばれた事業者の取り組み内容から、今、日本で展開している先進的な空き家対策の傾向を探ってみたい。
空き家対策相談員やコーディネーターなどの人材育成が主眼のひとつ
事業者の採択は、「人材育成と相談体制の整備部門」「空き家対策の共通課題の解決部門」の2つの部門別に行われた。
まず、「人材育成と相談体制の整備部門」では、「空き家に関する多様な相談に対応できる人材育成、多様な専門家等との連携による相談体制の構築」に対する支援を目的としている。この部門では、空き家対策に取り組むコーディネーターや空き家対策をサポートするファシリテーターなどを育成する事業者、そして空き家問題を抱える人が相談できる相談体制の整備に取り組む事業者などが選ばれた。
株式会社エンジョイワークスの「空き家再生プロデューサー育成プログラム」は、まさにその「人材育成」の取り組みだ。「令和元年度 空き家対策の担い手強化・連携モデル事業」として採択されたのは、その中の小規模不動産特定共同事業を活用した事業組み立ての手法を学ぶ「アドバンストコース」であり、これから講座が開かれる予定となっている。全国で開催される2日間の「ベーシックコース」、鎌倉で1カ月間のOJTを通じて空き家再生のノウハウを体得する「スペシャルコース」は、先行事業としてすでに講座が開かれており、スペシャルコースの卒業生は、早くも自らのプロジェクトをスタートさせている。なお、ベーシックコースとスペシャルコースは国土交通省の平成30年度および令和元年度「地域の空き家・空き地等の利活用等に関するモデル事業」に選ばれている。
エンジョイワークス「空き家再生プロデューサー育成プログラム」のサイト(画像協力/エンジョイワークス)
写真左から、同プログラムの講義、ワークショップ風景(画像提供/エンジョイワークス)
同プロジェクトの卒業生が手掛けている空き家活用プロジェクトでは、石川県加賀市の片山津温泉に空き家を購入。「空き家の古い物持ってっていいよDAY」「現地で宿の間取りを考える会」などのイベントをすでに実施済みだ(画像協力/ノスタルジックカンパニー)
「空き家の古い物持ってっていいよDAY」(画像提供/ノスタルジックカンパニー)
「現地で宿の間取りを考える会」(画像提供/ノスタルジックカンパニー)
ほかにも、以下のように、空き家相談員や調査員の育成、育成プログラム・研修制度・研修体制の作成・整備などを掲げた事業が見られる。
・空き家問題解決のコーディネート事業、活動拠点の拡大、相談員(コーディネーター)育成のため事例検討会開催を図る(NPO法人出雲市空き家相談センター/島根県)
・地域人材の連携による空き家の一元相談体制の構築や空き家調査フォーマットのWEBアプリケーション化の試験的導入など(株式会社三友システムアプレイザル/埼玉県入間郡毛呂山町など)
・相談窓口の運営、相談員・専門家等対象の研修等を通じた育成を強化(株式会社ジェイアール東日本企画/福島県田村市・三春町・小野町)
・シルバー人材センターを対象とした木造住宅簡易鑑定士および住教育インストラクターの育成や、空き家発生抑制に通じる住教育セミナーや勉強会など(一般社団法人全国古民家再生協会/全国)
空き家問題を解決に導くためのノウハウを備えた人材の育成・教育が、空き家対策を講じる上で急務であることが見て取れる。
相談体制の整備に共通するキーワードは「ワンストップ」
一方、相談体制の整備に関しては、相談窓口の設置、相談セミナーの開催など、空き家問題に悩む相談者に対するサポートを掲げる事業が採択された。
その多くに共通しているのが、「ワンストップ」という言葉。空き家にまつわる「相続」「生前対策」「修繕」「管理」「賃貸」「売買」「利活用」「解体」「跡地活用」といった多岐にわたる問題を、各所にたらい回しにせずにひとつの窓口で済むように相談に応じることを意味している。相談者の抱える問題に応じて、各分野の専門知識や経験のある相談員が相談を受けたり、相談員と専門家がペアになって相談に応じたりするといった仕組みが提案されている。
・所有者に対する暮らし方・ライフプランの提案と相続等の相談対応を一体的に処理できる体制整備に向けたツール作成や相談プラットフォーム構築(かごしま空き家対策連携協議会/鹿児島県)
・行政職員向けの空き家相談士研修会の開催や、専門知識と経験のあるNPO会員と行政職員がバディを組んだワンストップの総合相談体制整備(特定非営利活動法人岐阜空き家・相続共生ネット/岐阜県羽島市,岐阜県各市町)
・市窓口への電話や窓口来訪の場で解決をする空き家対策コーディネーターの育成や、窓口駐在での相談対応(京都府行政書士会/京都府京都市)
学生との協働を通じた担い手育成・啓蒙・持続性アップの試みも
「空き家対策の共通課題の解決部門」では、地方公共団体と専門家等が連携して共通課題の解決を図る取り組みが対象となり、その事業内容は、空き家問題の背景となる課題の解決を含めて実に多岐にわたっている。
その中で目を引くのが「学生」との協働だ。例えば、CANVAS合同会社(茨城県水戸市)では、水戸市中心市街地の空き家・空き店舗の調査を学生の講義の一環として実施。市街地の活性化を狙い、空き家の発生抑制を図る。また、学生が主体となって美容院だった空き店舗を多世代交流施設「マチノイズミ」として再生するプロジェクトを通じて、創業体験の場を設け、空き家・空き店舗の価値向上・啓発につなげる産官学連携の事業モデル構築に取り組んでいる。先行する試みとして、すでに市街地のランチマップ制作や、マチノイズミ改修のためのクラウドファンディングが実施済みだ。
写真左:マチノイズミプロジェクトの一環として、もともと美容室だった空き店舗を見学している茨城大学の学生たち(画像提供/CANVAS合同会社)
その空き店舗を多世代交流施設「マチノイズミ」として利用するために、茨城大生たちがDIYで改装した(画像提供/CANVAS合同会社)
同プロジェクトの講義風景(画像提供/CANVAS合同会社)
今回の事業の先行活動として、茨城大生たちが水戸市中心市街地をランチマップ制作のために散策。将来的に単位認定も視野に入れ、持続的で発展性のある活動とすることを狙いとしている(画像提供/CANVAS合同会社)
また、特定非営利活動法人空家・空地活用サポートSAGA(佐賀県佐賀市)でも、学生と協働した空き家利活用プランニングイベントやワークショップを開催し、利活用モデルを構築。次世代の空き家対策の担い手育成につなげるとしている。栃木県小山市も、地元の建築系学生の協力を得て空き家の早期発見・情報提供を行う「空き家パトロール事業」の試行を計画中だ。
民泊活用や福祉との連携など多岐にわたる取り組みが行われている
「空き家対策の共通課題の解決部門」では、さらにバラエティ豊かな事業が選ばれている。例えば、特定非営利活動法人かけがわランド・バンク(静岡県掛川市)では、昨年度行った空き家調査においてニーズの多かった民泊活用を促進するため、所有者・事業者向けの民泊勉強会の開催、マッチングサポート、民泊事業者向け勉強会を実施。民泊事業用建物チェックマニュアル、民泊事業手続マニュアルを作成する計画だ。
かけがわランド・バンクが先行事業として行った小学校区別空き家マップ作製事業の調査風景。空き家らしき建物の状態をチェックした(画像提供/かけがわランド・バンク)
同調査で作成したマップ。空き家の位置が家のマークでプロットされている(画像提供/かけがわランド・バンク)
同事業の空き家現地調査を踏まえて、空き家ではないかと推測される建物の所有者に配布した意向調査の案内と調査票。意向調査の結果、民泊活用のニーズが多かったことから、今回、民泊活用を促進するための新たな事業が立ち上げられた(画像提供/かけがわランド・バンク)
ほかにも、以下のようなさまざまな切り口からの取り組みが選ばれている。
・空き家バンクから選定したモデル物件における複合シェアサービス型賃貸住宅を試行。効果検証を通じた事業モデルの確立(株式会社九州経済研究所/鹿児島県鹿屋市)
・掘り出し物市でのテスト販売を通じた空き家残置物の流通ネットワークをつくり、廃棄物減少と販売収益の解体費への充当による空き家除却モデルを検証(特定非営利活動法人Goodstock/兵庫県たつの市など)
・既存の航空写真・GISマップ等を活用した空き家予備軍の判断方法をマニュアル化。自治体と民間が共有する空き家地図プラットフォームの基盤の構築に向けた試行・検証を行う(国際航業株式会社/愛知県新城市)
団地やニュータウンのある地域では、主にその団地・ニュータウンから発生する空き家を対象として事業を展開する団体もある。
・県内最大規模の団地である西諌早ニュータウンへの空き家相談窓口の開設と常駐相談員のスキルアップ等を図る(一般社団法人ながさき住まいと相続相談センター/長崎県)
・洛西ニュータウンにおける空き家発生抑制のための中古住宅流通の改修の独自モデルを検討(洛西NTアクションプログラム推進会議住宅・拠点関係ワーキンググループ/京都府京都市西京区[洛西ニュータウン])
・郊外の団地をモデル地区とした空き家予備軍に関する調査を実施(特定非営利活動法人あいち空き家修活相談センター/愛知県豊田市)
持ち主の死亡による相続のタイミングで空き家が発生することが多いことから、高齢者の終活相談などとの情報共有体制を敷いたり、地域包括支援センターと連携して社会福祉士・保健師・看護師・ケアマネジャー等のスキルアップを図る事業者も多数。福祉との連携も、空き家問題解決の一策であることが分かった。
空き家対策は、相続、建築、不動産、福祉と、実にさまざまな分野にまたがったアプローチが必要。今回、採択された事業者の取り組みを見ると、そうした多角度から問題を解決しようとする試みが、全国で展開されていることが伝わってきた。空き家の発生を抑制する予防的なものから、空き家の利活用まで、多分野にわたった取り組みが有機的につながり、全国に波及していくことが、空き家問題解決の糸口となるではないだろうか。
●参考
・国土交通省リリース(「空き家対策に関する人材育成・相談体制の整備等に取り組む団体を決定」)
・株式会社エンジョイワークス「空き家再生プロデューサー育成プログラム」
・CANVAS合同会社
・特定非営利活動法人かけがわランド・バンク
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