- 「住まいのリフォームコンクール(2019年度)」受賞作に見る最新リフォーム事情 投稿日 2019年10月12日 07:00:45 (不動産ニュース)
- 「リノベ・オブ・ザ・イヤー2017」 13の受賞作品から見えた4つのトレンド
- 部屋の寒さは窓次第!? 進化する「省エネ窓」の断熱効果に注目
- 環境省課長と突撃! 大規模マンション元理事長に聞く、断熱・省エネ修繕のメリット
- 家事が億劫になるのは、怠け癖ではなく「住まいの温熱性能」が理由だった!?
- 財政破綻の夕張市にオープン「くるみ食堂」。空き家リノベから街も変えたい! 故郷にUターンし、住民・農家も応援
- 首都圏の住宅流通市場、昨年は価格は上昇&成約は減少と硬直気味。2023年はどうなる?
- 高円寺の愛され純喫茶を訪ねて。『純喫茶コレクション』著者・難波里奈さんと、私語禁止の名曲喫茶や老舗店で昭和レトロを味わう
- 【慶應義塾大学】周辺のオススメ賃貸情報&家賃相場ランキング2023年版! 日吉&三田キャンパス(一人暮らし向け)
- 純喫茶から譲り受けた家具でつくったお部屋「喫茶 あまやどり」。東京喫茶店研究所二代目所長・難波里奈さんの昭和レトロあふれるおうち拝見
- 世界の名建築を訪ねて。“曲面テラス” に覆われた超高層集合住宅タワー「アクア・タワー(Aqua Tower)」/アメリカ・シカゴ
- 田んぼに浮かぶホテル「スイデンテラス」の社員はU・Iターンが8割! 都会より地方を選んだ若者続出の魅力とは? 山形県鶴岡市
- 【明治大学】周辺のオススメ賃貸情報&家賃相場ランキング2023年版! 和泉キャンパス(一人暮らし向け)
- 東京都23区のファミリータイプの賃貸住宅が活況。就業環境や働き方の変化が影響?
- 若者も高齢者も”ごちゃまぜ”! 孤立ふせぐシェアハウスや居酒屋などへの空き家活用 訪問型生活支援「えんがお」栃木県大田原市
- 高齢者・外国人・LGBTQなどへの根強い入居差別に挑む三好不動産(福岡)、全国から注目される理由とは
- 世界で5番目に高額なシンガポールの不動産。一方で高い持ち家率、その理由は?
- 高齢者や外国人が賃貸を借りにくい京都市。不動産会社・長栄の「入居を拒まない」取り組みとは
- 2023年は省エネ住宅がお得!補助が出る優遇制度、活用方法を解説。「住宅省エネ2023キャンペーン」はじまる
- 世界基準の“超省エネ住宅”パッシブハウスの高気密・高断熱がすごい! 190平米の平屋で空調はエアコン1台のみ
- 近所の農家と消費者が育むつながりが地域の心強さに。「縁の畑」が始めた”友産友消”とは?
- 【フラット35】同性パートナーの申込み、今年から可能に。必要書類、住宅ローンの返済方法は?
- リノベーション・オブ・ザ・イヤー2022に見るリノベ最前線。実家を2階建てから平屋へダウンサイジングや駅前の再編集など
- ニセコ町に誕生の「最強断熱の集合住宅」、屋外マイナス14度でも室内エアコンなしで20度! 温室効果ガス排出量ゼロのまちづくりにも注目
- パリ郊外の元工場を自宅へ改装。グラフィックデザイナーが暮らすロフト風一軒家 パリの暮らしとインテリア[16]
- ニューヨーク人情酒場 現代のアメリカンドリーム・寿司職人に私はなる! 師匠は元意外な職業
- IoT技術で進化した「スマートバス停」が便利すぎる! インバウンド対応や自販機一体型も登場
- コロナ後に地元を盛り上げたい人が増加。駄菓子屋やマルシェなど"小商い"でまちづくり始めてみました!
- 瀬戸内国際芸術祭の舞台、人口800人弱の”豊島”に移住者が増えている! 「余白のある」島暮らしの魅力とは?
- 3Dプリンター建築に新展開!複層階化や大規模化に大林組が挑戦中。巨大ゼネコンが描く将来像は宇宙空間にまで!?
- 収穫お手伝いで食事・宿を無償提供!? 国内外からサポーター集う「オキオリーブ」関係人口の起点に 高松市
- 土間や軒下をお店に! ”なりわい賃貸住宅”「hocco」、本屋、パイとコーヒーの店を開いて暮らしはどう変わった? 東京都武蔵野市
- JR中央線(東京都内)、家賃相場が安い駅ランキング 2022年版
- マンション住民の高齢化で防災どう変わる? 孤立を防ぐ「つつじが丘ハイム」の取り組みが話題 東京都調布市
- 家賃債務保証会社の強引な「明け渡し条項」に使用差し止め判決。裁判で争われたポイントは?
「第36回住まいのリフォームコンクール(2019年度)」の審査結果が発表され、2019年10月24日に表彰式が開催される予定だ。審査では、画期的な断熱改修から、高齢者(バリアフリー)対応、縫製工場を住宅兼アトリエとして再生した例まで、バラエティ豊かな5つのリフォーム例が特別賞を受賞。今回は、この5つの事例から、リフォームの最前線とこれからを探ってみた。
全室床暖房と可変性の両方を実現したマンションが国土交通大臣賞を受賞
昭和60年(1985年)度に始まり、第36回を迎えた「住まいのリフォームコンクール」(公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター主催)。今年度は、住宅リフォーム部門に397件、コンバージョン部門に33件、総数430件の応募があり、「第36回住まいのリフォームコンクール審査委員会(委員長 真鍋恒博 東京理科大学名誉教授)」による審査の結果、特別賞5賞をはじめとする27件の入賞作品が選定された。
特別賞のうち、「国土交通大臣賞」に選ばれた[住宅リフォーム部門]「浦和の家~全室床暖房のある可変する終の棲家」(株式会社マスタープラン一級建築士事務所)は、マンションの住戸をまるごと冷暖房することで、これまで冷暖房機の移動がネックとなっていた将来の間取り変更にも対応できるようにした点が画期的だ。
廊下の天井裏に5kwダクト形エアコンを取り付けて、天井裏側と床下側に弁を設置。弁を開閉することで、夏は天井裏に冷気を、冬は床下に暖気を送る。窓側の床面に暖気を吹き出すガラリを、各部屋の天井付近に冷気を送り出す吹出口を設け、1台のエアコンで家中の空気を快適に保つことができるようにした。
<Before>
<After>
<Before>
<After>
写真上:「浦和の家」のBeforeとAfter。リビングをテレビ台でゆるく仕切り、片側を畳スペースに。仕切りをテレビ台にしたことで、将来の間取り変更も容易だ/写真下:対面式だったキッチンをフルフラットキッチンに(写真提供/株式会社マスタープラン一級建築士事務所)
写真上:窓側の床に設けたガラリ。冬には暖気がここから吹き出る/中央:天井裏のダクトエアコンから冷気と暖気が家中に届く仕組み/下:壁4面と天井に断熱材(硬質発泡ウレタン)を吹き付けた(写真は別物件)(写真・画像提供/株式会社マスタープラン一級建築士事務所)
断熱改修には温熱環境の改善やカビ・結露の防止、光熱費軽減などの効果が
「浦和の家」を手掛けた株式会社マスタープラン一級建築士事務所代表取締役の小谷和也さんは、受賞の意義をこのように語っている。
「マンション専有部の改修は、できることが限られ、一戸建ての改修に比べてコンセプトが弱くなりがちです。『浦和の家』は、初採用した全室空調をはじめとして、基本性能の向上、家具での可変性や住まい手の暮らしぶりなどを現地審査でも評価いただけたということが、何よりうれしいです」
これからリフォームを考えている人にも参考にできるポイントなどはあるだろうか。
「この『浦和の家』のように、開口部に内窓や障子を設け、 壁や天井に断熱材を追加することで断熱性能を高めることはどんなマンションでも可能です。そもそも、マンションが一戸建てよりも暖かいのは、気密性が高いから。同時に蓄熱性も高いので、夏の日射熱、冬の夜間の冷熱も蓄えてしまい、最上階や角部屋の猛烈な暑さ、1階住戸の底冷えする寒さ、カビや結露の原因にもなっています。断熱改修をすれば、これらの問題は一挙に解決。アレルギーなどの予防も期待でき、結果的に光熱費も下がるので、マンションのリフォームを考えている皆さんにはぜひ検討してほしいですね。また、乾式二重床は、床の軽量衝撃音を和らげ遮音性を確保する上でも重要なので、リフォーム時の床仕上げは乾式二重床をお薦めします」(小谷さん)
<Before>
<After>
家具を利用した間仕切りによって可変性の高い間取りとなった「浦和の家」(画像提供/株式会社マスタープラン一級建築士事務所)
性能向上によって施主の不満を解消し居住性を高めた特別賞受賞作
続いて、ほかの特別賞を受賞した4例も紹介しよう。
【独立行政法人住宅金融支援機構理事長賞】
[住宅リフォーム部門]「耳が遠くなった母の為の『QOL向上リフォーム』」(株式会社育暮家ハイホームス)
築46年という一戸建てのLDKや寝室、浴室など生活の中心ゾーンを断熱し、ゾーン内の温度差をなくして高齢者夫婦をヒートショックなどの健康リスクから守るリフォーム。LDKを明るく暖かい南側に移し、寝室とトイレの距離も近くして、動線を短縮した。動きやすくなった上、冬が暖かく暮らせるようになり、夜もよく眠れるという。断熱区画を区切ることで主な生活空間内の温度差をなくすというやり方は、コストを抑えたリフォームにも活かせそうだ。
寝室はLDKの隣。お互いの気配を感じることで安心して過ごせる(写真提供/株式会社育暮家ハイホームス)
【公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞】
[コンバージョン部門]「アトリエのある家[河北町]-ストックの再生が地域を変えていく-」(株式会社結設計工房)
空き家のままになっていた築30年弱の縫製工場を、陶芸教室のためのアトリエを備えた住宅へと再生させた“コンバージョン”の事例。陶芸教室が地域のコミュニティスペースとなり、地域の活性化につながったそう。老後は陶芸教室部分をリビングダイニングに改修することで、1階部分だけで生活できるように計画しており、老後を見据えたリフォームとしても参考になりそう。
陶芸教室を開いているアトリエ。縫製工場だったときの照明器具をそのまま利用しているが、蛍光管は LED に換えている(写真提供/株式会社結設計工房)
【一般社団法人住宅リフォーム推進協議会会長賞】
[住宅リフォーム部門]「自然をコントロールする家」(喜多ハウジング株式会社)
吹抜けのおかげで夏は風が通るものの、冬には暖気が上に流れて寒かった一戸建てを、吹抜けに開閉可能な建具を設けることで寒さ解消につなげた。暗くて開放感がなかったキッチンを対面式にして改善し、断熱材やインナーサッシで断熱性能も向上させながら、総工費は900万円弱。床と平行に建具を施工して吹抜けに蓋をするアイデアは、吹抜けのある一戸建ての寒さ解消策として、大いに参考になるのでは?
写真左:夏は建具を開けるので、上下に空気が通り、涼しく過ごせる/写真右:冬は建具を閉じることで、1階の暖気を2階に逃がさずに済み、暖かく過ごせるようになった(写真提供/喜多ハウジング株式会社)
【一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会会長賞】
[住宅リフォーム部門]「若い僕らも老後は心配-性能向上リノベーションしました!-」(株式会社アルティザン建築工房)
超高性能リノベーションのモデルハウスをつくるという設計者の計画に共鳴した施主による性能向上リフォームの例。リフォーム版のLCCM住宅(建設時、居住時、廃棄までのライフサイクルトータルでCO2の収支をマイナスにするライフサイクルカーボンマイナス住宅)を目指したことで、札幌でも壁からの冷輻射が感じられないほどの暖かい家になった。開口部耐震商品を使うことで、窓を減らさずに耐震補強ができた点は、耐震リフォームを考えている人の参考になるだろう。
天板にクオーツストーンを使ったこだわりのキッチン。屋根に設置した太陽光発電システム(10.8kw)のおかげで、使用電力はすべてまかなえている(写真提供/株式会社アルティザン建築工房)
特別賞を受賞した5事例に共通しているのは、リフォームによって施主の悩みや不満を解消し、暮らしの質を改善していること。特に、断熱性能の向上が温熱環境を改善し、快適な暮らしを可能にしていることが、どの事例からも伝わってきた。それには、施主の意向を汲み、いろいろな制約のなかで工夫を施す設計者たちの努力が不可欠なのだろう。今後もこのコンクールに多くの力作が寄せられ、日本のリフォーム、ひいては日本の住宅と住まい手の暮らしの質を一層高めることを期待したい。
●参考
・第36回住まいのリフォームコンクール審査結果
元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2019/10/167705_main.jpg
あわせて読みたい─関連記事─
住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル
Source: news
最新情報