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新型コロナウイルスは学校教育やビジネスだけでなくさまざまな分野にも影響を与えています。各地方自治体が補助金などの独自の支援策を行っているなか、横浜市はコロナ収束後の地域社会を見据えながら、インターネットを活用したコミュニティづくりにいち早く乗り出しています。連載名:全国に広がるサードコミュニティ
自宅や学校、職場でもなく、はたまた自治会や青年会など地域にもともとある団体でもない。加入も退会もしやすくて、地域のしがらみが比較的少ない「第三のコミュニティ」のありかを、『ローカルメディアのつくりかた』などの著書で知られる編集者の影山裕樹さんが探ります。おたがいハマとは? コロナ禍に際して緊急オープン
新型コロナウイルスの影響で、人に会う機会が激減し、オンライン飲み会などでさみしさを紛らわせている人も多いのではないでしょうか。緊急事態宣言が解除されても、これまでとは違った暮らし方が余儀なくされることでしょう。
そんな、リアルな人のつながりが希薄になっていくかもしれない今、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えてもともとある地域のコミュニティ活動を促進したり、今後の新しいコミュニティ形成を担うことを目的としたプラットフォーム「おたがいハマ」がこの5月より運営をスタートさせました。
おたがいハマWEBサイト
おたがいハマとは、横浜の市民や企業、大学、行政が連携し、共創、参加型の取り組みを広げていこうとするWEBサイト。横浜市内外のコロナウイルス関連情報の発信、働き方、暮らし方の変化に対応するためのアクション(後述の横浜市内の飲食店のコロナ対策やテイクアウト情報などを紹介する「#横浜おうち飯店」プロジェクトなど)や、オンライントークイベントなどをこれまで開催してきました。リアルで出会えないからこそ、オンラインで支え合う。「ネット上のサードプレイス」を謳った取り組みです。
ネットがメインではあるものの、横浜市民や横浜市がこれまで培ってきた人と人のつながり=関係資本を活かし、コロナ後の“市民発意型”アクションにつなげていくためのコミュニティづくりを心がけています。
おたがいハマをスタートさせたのは、ウェブマガジン「ヨコハマ経済新聞」などを運営するNPO法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ」と、横浜市内で複数の「リビングラボ」という市民活動をサポートする一般社団法人「YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス」。コロナ禍にいち早く反応し、5月1日には同2団体と横浜市との間で正式に協定が締結され、市民の自発的な活動に行政がいち早く参画を表明したことも話題となりました。
横浜コミュニティデザイン・ラボの杉浦裕樹さんは、いまこそ民間と行政がタッグを組み公共性の高い情報を市民に届けることが不可欠だと語ります。
「5月15日に横浜市が新型コロナウイルスに対する5000億円の補正予算を成立させたのですが、こういう情報を知らない市民に適切に情報を届けたいということと、横浜市内の飲食店や小規模事業者が、コロナ禍でいろんな工夫をしたりしているのですが、そうした情報を発信したり、人と人をつなげる場が欲しいよね、ということでおたがいハマが立ち上がりました」(杉浦さん)
コロナ後のコミュニケーションを準備する
「ハマのお店を応援する!」というコンセプトのもと、横浜市内の飲食店のコロナ対策やテイクアウト情報などを紹介する「#横浜おうち飯店」プロジェクトは、観光客の激減で打撃を受けている中華街などの飲食店の支援にひと役買っています。また、コロナ禍に立ち向かう横浜市内の事業者、行政マン、市民活動家をリレー形式で紹介する「おたがいハマトーク」は、5月1日のオープンより、平日毎日、お昼時に配信されています。
オンラインイベントの様子(画像提供/おたがいハマ)
(画像提供/おたがいハマ)
おたがいハマに準備段階から関わり、上述のトークイベントの配信や、Facebookグループの運営をはじめとしたプロジェクト・マネジメント全般を統括する編集者・ライターの小林野渉(のあ)さんは、京急線の高架下の複合施設「Tinys Yokohama Hinodecho」で“コミュニティ・ビルダー”や、簡易宿泊所(ドヤ)が立ち並ぶ福祉の町と変貌した寿町にある「ことぶき協働スペース」のまちづくりスタッフとしてとして活動するなど、地域を巻き込んだプロジェクトの広報やマネジメントを得意としています。そんな小林さんがジョインすることで、おたがいハマはWEBプラットフォームの枠を超えて、横浜市民の助け合いのためのメディアとして動き出しています。
「横浜に拠点のあるメディア、行政、大学など日々、いろいろな方がこのプロジェクトに参加表明してくれるんですが、当然、編集者やデザイナー、もしくは“傾聴”というスキルを持った方などバリエーション豊かな市民がいます。例えば横浜市金沢区でテイクアウトのアプリをつくるデザイナーがいるんですが、金沢区で活動するNPOや商店街の人は知らなかったりする。近所にいるのにお互い知らなかった人をトークで一緒にしてあげると、新しいことが始まると思うんです」(小林さん)
メディアに登場しないけれど地道に活動している市民とその拠点が「見える化」することはとても大切です。意外に身近にいる、新しい仲間との出会いや、同じ地域に暮らしているがゆえの課題を共有する事業者との助け合いを後押しします。こうした目に見えないつながりは、ウィズコロナの今だけでなく、アフターコロナでこそ真価を発揮することでしょう。
横浜ならではのコミュニティ資源
それにしてもなぜ、横浜で民間と行政が連携し、おたがいハマのようなプラットフォームを迅速にスタートすることができたのでしょうか? 横浜市政策局共創推進課の関口昌幸さんはこう語ります。
「横浜市では数年前から、地域課題や政策課題を市内の各地域ごとに議論し、事業モデルをつくる“共創ラボ”や”リビングラボ”という活動を支援してきました。おたがいハマの発起人でもあるYOKOHAMAリビングラボサポートオフィスとともに取り組んでいて、市内に15ほどのリビングラボがあります。そこに加えて杉浦さんの横浜コミュニティデザイン・ラボと市の三者連携でおたがいハマが生まれたんです」(関口さん)
左から杉浦裕樹さん、関口昌幸さん
小林野渉さん
企業が大学やNPOなどと協働しオープンイノベーションに取り組む事例は多々ありますが、そこに市民がジョインして一緒に活動しようという取り組みを「リビングラボ」といいます。関口さんが言うように、横浜には複数のリビングラボがあって、それぞれの地域課題を市民目線で解決していこうという流れができつつあります。横浜って地元愛が強いイメージがありますが、地元を愛する市民が多いからこそ、仕事から帰ったら寝るだけ、ではなく、日ごろから関わり合う地域コミュニティが活発です。まさに、学校でも職場でもない、“サードコミュニティ”に複数所属しているのが横浜市民の強みなのかもしれません。杉浦さんは話します。
「横浜で20年以上、コミュニティデザインの活動をしていますが、横浜って、観光資源もいろいろあるけれど、コミュニティ資源が豊かな印象があります。横浜にはNPOが今1500~1600ぐらいあるんですよ。そこにSDGsの流行もあって、企業が市民やNPOとタッグを組み地域課題に取り組む流れが自然と育まれてきました。こういう横浜ならではの土台があるからこそ、おたがいハマのような取り組みもできるのだと思います」(杉浦さん)
ネット上のサードプレイスを目指して
おたがいハマでは横浜市民同士の横のつながりで生まれた活動を広く市民に発信し、応援しています。例えば最近だと、戸塚リビングラボのメンバーである介護事業者の方が、まさに「おたがいハマ」の精神で、サービス付き高齢者住宅にランチやディナーを届けるプロジェクトが始まりました。また、高齢化が激しい横浜・寿町の住人と関わる医療や介護事業者に、就労継続支援B型事業所の通所者やアルコールなどの依存症患者らがつくったガウン(防護服)を配布するプロジェクト「寿DIYの会」もスタート。ガウンは作業賃を支払った仕事として制作しており、現在の工賃は時給250円。今後は工賃の増額を目指しています。寿DIYの会ではガウンの材料費・作業費向上も含め、広く寄付金を募り、グッズの販売もしています。
普段であれば、介護福祉施設や工務店、工場、商店主など多様な事業者同士の接点はなかなかありません。しかし、お互いのスキルや得意なところを持ち合えば、いろんな課題が解決していくはず。距離的に近いからこそ、つながったほうがいい人たちはたくさんいる。おたがいハマは、異なる立場にいる人たちをつなぐ、目に見えない地道で、でも大切な“ネット上のサードプレイス”になりつつあるのです。
戸塚リビングラボの活動の様子(画像提供/一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス)
寿DIYの会の取り組み(画像提供/寿DIYの会)
おたがいハマは横浜市もメンバーに加わっていますが、決して行政主導のプロジェクトではありません。あくまで広報協力や人や事業者の紹介、バックアップの立場にとどまっています。「意義のある取り組みだから、もっとお金を投入すればいいのに」「横浜市、何もやってないじゃん!」という意見もあるかもしれませんが、むしろ行政の事業でないからこそボトムアップで有機的な活動が生まれるので、後方支援に徹した方がいいこともあります。関口さんはこう語ります。
「新型コロナの問題に関して、東京都がシビックテックを使って感染者数を見える化するサイトをつくって話題になりました。もちろん、行政による情報開示は大事なのですが、どうしても自治体からの情報発信って一方的になりがちです。でも、今の時期に大事なのって、市民と一緒にコロナ禍に立ち向かうんだというメッセージ、思想なんじゃないでしょうか。まちをつくるのは市民であり、行政はそれを最大限サポートする。なぜなら私たち市の職員も、横浜市民としてできることをしたいからです」(関口さん)
行政による必要な資金面での支援は、先に紹介したようにさまざまな分野ですでに行われています。予算を使い議会にかけるような事業にしてしまっては、市民の自発性やボランティア精神に頼ったプロジェクトは、瞬く間に萎んでしまうでしょう。行政セクターだろうが民間だろうが、それぞれの立場でできることをシェアし、一歩前に踏み出して支え合う、そんなことが自然とできる人が多いのも、横浜ならではだなぁと羨ましくなります。
5月1日に正式にスタートして、まだ1カ月半にもかかわらず、おたがいハマトークはすでに28回目を迎えています(※6月5日現在)。現在は地元の大学の学生がファシリテーターとなってトークイベントを回すなど、関わる人がどんどん増えてきている印象があります。
コロナウイルス感染症で学んだことは、ネット上でのコミュニケーションを加速して業務を効率化する、ということだけではありません。ネット上だけで互いの信頼関係を醸成することは難しい。リアルで会ったときに、見知らぬ人同士ではなく、少しの信頼感を持ち寄って話せること。その関係資本を積み上げていくこと。アフターコロナに向けて、行政、民間、個人の区別なく、今僕たちが準備しなければならないことのヒントが、おたがいハマには詰まっています。今後もおたがいハマの活動に注目していきましょう!
●取材協力
#おたがいハマ
横浜コミュニティデザイン・ラボ
一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス
寿DIYの会
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